ここ数年、優勝から遠ざかっている読売ジャイアンツ。
優勝が義務付けられたチームながら、近年は広島東洋カープの台頭により優勝できない状況が続いている。
そんな低迷している読売ジャイアンツの中で、現在ジャイアンツ内だけではなく、球界No.1ピッチャーの地位を築いている投手、菅野智之。
プロ入り前は叔父の原辰徳のいる巨人への入団のために野球浪人者として翌年以降のドラフト指名を待つという茨の道を歩んだ彼だが、ジャイアンツ入団後はメキメキと頭角を現し、名実ともに巨人軍のエースとしてチームを牽引している。
そこで今回は、ジャイアンツエースにまで上り詰めたこれまでを振り返っていこうと思う。
菅野智之(巨人) 年俸推移
出典:http://www.giants.jp/G/player/prof_27227.html
年 | 年俸(推定) | チーム | 背番号 |
2013年 | 1500万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2014年 | 7000万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2015年 | 1億1000万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2016年 | 1億3000万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2017年 | 2億3000万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2018年 | 4億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 19 |
2019年 | 6億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 18 |
上記を見る限り、彼の年俸の上がり方は尋常ではない。
2013年に入団後、1年目から13勝を挙げ、推定1500万という年俸を獲得し、3年目からは1億円の大台に到達し、2019年には日本人選手最高年俸の6億5千万円にまで届いている。
高給な巨人において、この年俸推移は彼相応の金額であろう。
また、以下は成績推移である。
年度 | 所属球団 | 登板 | 勝利 | 敗北 | セーブ | H | HP | 完投 | 完封勝 | 無四球 | 勝率 | 打者 | 投球回 | 安打 | 本塁打 | 四球 | 死球 | 三振 | 暴投 | ボーク | 失点 | 自責点 | 防御率 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 読 売 | 27 | 13 | 6 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .684 | 729 |
|
166 | 10 | 37 | 5 | 155 | 2 | 0 | 70 | 61 | 3.12 | ||
2014 | 読 売 | 23 | 12 | 5 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | .706 | 640 |
|
138 | 12 | 36 | 2 | 122 | 6 | 0 | 50 | 41 | 2.33 | ||
2015 | 読 売 | 25 | 10 | 11 | 0 | 0 | 0 | 6 | 2 | 0 | .476 | 710 |
|
148 | 10 | 41 | 7 | 126 | 3 | 0 | 46 | 38 | 1.91 | ||
2016 | 読 売 | 26 | 9 | 6 | 0 | 0 | 0 | 5 | 2 | 3 | .600 | 726 |
|
156 | 12 | 26 | 4 | 189 | 1 | 0 | 46 | 41 | 2.01 | ||
2017 | 読 売 | 25 | 17 | 5 | 0 | 0 | 0 | 6 | 4 | 3 | .773 | 713 |
|
129 | 10 | 31 | 1 | 171 | 1 | 0 | 36 | 33 | 1.59 | ||
2018 | 読 売 | 28 | 15 | 8 | 0 | 0 | 0 | 10 | 8 | 4 | .652 | 801 |
|
166 | 14 | 37 | 3 | 200 | 3 | 0 | 52 | 48 | 2.14 | ||
通 算 | 154 | 76 | 41 | 0 | 0 | 0 | 31 | 16 | 11 | .650 | 4319 |
|
903 | 68 | 208 | 22 | 963 | 16 | 0 | 300 | 262 | 2.17 |
菅野智之(巨人) 2013年・年俸1,500万円・契約金1億円・背番号19
出典:https://number.bunshun.jp/articles/-/821748
冒頭でもお伝えした通り、菅野智之は巨人入団に至るまでに紆余曲折あった。
高校時代からプロ注選手としてアマチュア界では有名な選手となっており、東海大学時代も桁違いの成績を残し、明大の野村祐輔(現・広島東洋カープ)、東洋大の藤岡貴裕(現・千葉ロッテマリーンズ)とともに「大学ビッグ3」としてその進路が注目されていた。
ご存知の通り、彼は東海大相模高出身、更には叔父に原辰徳という一家で育った影響から、意中の球団は読売ジャイアンツであった。
彼のバックグラウンドを顧み、誰しもが読売ジャイアンツ入団濃厚と予想していたのだが、ドラフト会議において、何と北海道日本ハムファイターズが強行指名し、巨人との抽選の結果、日本ハムが交渉権を獲得した。
これに対し、菅野本人は、
「目先のことだけではなく、その先の野球人生を考えた上で判断したい」
とコメントを残し、その後日本ハムの指名を断り、翌年のドラフトを見据え1年間の野球浪人を決断した。
そして1年後、念願が叶い読売ジャイアンツへ入団を果たすと、1年目から13勝という新人らしからぬ成績を残したのだ。
菅野智之(巨人) 2014年・年俸7000万円・背番号19
「2年目のジンクス」
プロ野球界において、この言葉はよく使われる言葉だ。
ルーキーイヤーに活躍することにより、各球団が研究に研究を重ね、投手の弱点、癖、配球など、様々な視点で選手を研究し、攻略法を探る。
そういった研究から、入団2年目には壁にぶち当たる選手が多くいるのだが、菅野投手も例外ではなかった。
シーズン開幕戦では自身初の開幕投手を務めたものの、夏場に入ると思うような投球ができず、成績も落としてしまった。
7月は4試合に登板し1勝2敗。
この間の防御率は6.12という不振となり、相手チームの研究や疲労の蓄積、フォームが乱れ制球力が不安定になり、多くの試合で打ち込まれるようになった。
更に7月16日のヤクルト戦において、右手中指の腱の炎症を起こし、その後登録を抹消されたのだ。
プロ入団後初の二軍調整となり、苦しい時期を過ごしたものの、彼は焦らずここできちんとした走り込み、下半身強化に重点を置き、1軍で対応できる基礎体力を鍛え直した。
その後、1軍復帰し、リーグ3連覇を果たすが、クライマックスシリーズで4連敗を喫し、彼にとっては悔しいシーズンとなってしまった。
菅野智之(巨人) 2015年・年俸1億1000万円・背番号19
出典:https://mainichi.jp/graphs/20180816/hpj/00m/050/007000g/19
前年度CSで敗退したものの、菅野個人としての成績は十分チームに貢献したことを評価され、年俸は入団3年目で1億円という大台に突入した。
2015年シーズン、前年に続き開幕投手として登板。横浜DeNAベイスターズを相手に7回を投げ、5奪三振、1失点でシーズン初勝利を挙げた。
そして5月の阪神戦で入団後初の完封勝利を記録したが、シーズンは最終的に10勝11敗、防御率1.91となり、入団から3年連続二桁勝利をマークしたものの、結果的にはペナントにおいてプロ入り後初めて負け越しとなってしまった。
この要因として挙げられるのが「打線の援護の無さ」と「救援陣の崩壊」であった。
ジャイアンツファンには有名だが、菅野が登板する試合は、打撃陣が何故か点が取れない。
どれだけ好投しても点を取らなければ勝てない。
また、試合終盤まで優勢に進んでいた試合も、終盤、リリーフ陣が打ち込まれ、勝ちが消えてしまう試合が多くあった。
並みの投手であれば、攻撃陣やリリーフ陣に苦言を呈するだろうが、並みの投手ではない菅野は、誰かのせいにせず、自身の責任としてきちんと受け止めるのだ。
そう。これが本当のエースであり、菅野の人間性がよく出た言動であると感じた。
菅野智之(巨人) 2016年・年俸1億3000万円・背番号19
出典:https://www.daily.co.jp/newsflash/baseball/2016/06/03/0009149701.shtml?ph=1
2016年シーズン、前年から2000万円アップで契約更新した菅野。
同シーズンでも3年連続開幕投手を担い、7回無失点の好投で初勝利を挙げ、1993年から1996年に3年連続開幕先発勝利投手斎を記録した藤雅樹以来となるという快挙を成し遂げた。
4月は4試合33イニングを自責点0、月間防御率0.00をマークし、月間MVPに選出された。
例年通り打線の援護が少なく勝ちに恵まれない試合もあったが防御率1点台をキープし、(最終的には2点台)最終的には最優秀防御率と最多奪三振のタイトルを獲得した。
しかし、このシーズンでも巨人はCS敗退し、菅野自身もコンディション不足で登板できない悔しいシーズンとなった。
菅野智之(巨人) 2017年・年俸2億3000万円・背番号19
出典:https://twitter.com/sankei_news/status/844354878575013888?lang=ar
2017年シーズン、前年度から1億円プラスの2億3000万円で契約更新をした菅野投手。
コンスタントに成績を残し、チームの中心選手として、そして「読売巨人軍の顔」として、球団からの誠心誠意を込めた対価の大幅アップだ。
そしてこの年、4回目となるワールドベースボールクラシックス(WBC)が開催され、菅野は小久保監督からエースに指名され、菅野自身も日本のエースとしてチームを牽引。
残念ながら日本は準決勝のアメリカ戦で敗れたが、菅野はこのアメリカ戦で6回1失点(被安打3、自責0)と好投し、アメリカの監督であるジムリーランド監督は、
「彼はメジャーリーグのピッチャーに相当する」
と賛辞を送った。
WBC後のシーズンに入っても、菅野の調子はぐんぐん上がり、最終的に25試合に登板し17勝5敗、防御率1.59とキャリアハイの成績を残した。
菅野智之(巨人) 2018年・年俸4億5000万円・背番号19
出典:http://noburin.xyz/sky/2018/10/14/【csノーノー】巨人・菅野智之さんの直近5登板w/
2018年、前年度から2億2千万アップの4億5千万円で契約更新した菅野。
この年菅野は自身の投球の幅を広げるべく、シンカーの習得に努める。
しかし、このシンカーを習得したことにより、彼は苦労してしまう。
シーズン開幕戦、二度目の登板だった対東京ヤクルト戦と開幕2戦連続で負け投手となってしまう。
この連敗を機に、彼はシンカーの封印を決意。その結果徐々に調子を取り戻し、本来の菅野の投球に戻っていき、シーズンの成績は15勝8敗という結果となった。
同年のクライマックスシリーズにおいても菅野の勢いは止まらず、CSファーストステージ第2戦のヤクルト戦で自身初のノーヒットノーランを達成し、チームのファイナルステージ進出に貢献した。
菅野智之(巨人) 2019年・年俸6億5000万円・背番号18
出典:http://tosmo.xsrv.jp/tohshi/2019/02/20/【野球】巨人%E3%80%80菅野智之投手、圧巻のフリー打撃/
前年度から2億円アップの6億5千万円という年俸になり、球界No.1の高年俸となった。
また、新監督に就任した原辰徳氏の方針で実施された‘背番号シャッフル’により、菅野の背番号は19から18に変更になり、歴史の長い巨人のエースナンバーを背負うことになった。(※19番は上原浩治に変わった。)
大型補強により戦力アップしたジャイアンツにおいて、菅野の活躍は必須であり、彼が負ければチームの勢いも衰えてしまう。
それだけ重要な立ち位置にある菅野。彼がジャイアンツの運命を握るのは確かだ。