今のプロ野球では当たり前となったドーム球場。
屋外の空気を感じ、ビールを飲みながら観戦をするのも屋外球場の醍醐味ではありますが、やはり全天候型のドーム球場は快適に野球が見れることが何より優れている点ではないでしょうか。
ドーム球場であれば、暑い、寒いといったこともないですし、雨風をしのげることがストレスフリーであることは間違いありません。
ただ、こういった全天候型のドーム球場であるにも関わらず、快適に野球が見られるとは限らない、というドーム球場があるのはご存知でしょうか。
それが、埼玉西武ライオンズの本拠地である、西武ドーム(2020年現在の正式名称は「メットライフドーム」)です。
平成初期までのプロ野球を観ている方であればご存知だと思いますが、この西武ドームは、誕生当時からドーム球場であったわけではありません。
そして、現在のドーム球場として完成した後に、ある悪評がつきまとうことになったのです。
その代表的な悪評が「西武ドームは暑い」。
今回はそんな「暑さ」で有名となってしまっている西武ドームの暑さの原因についてご紹介していきたいと思います。
西武ドーム(メットライフドーム)とは
冒頭でご紹介した通り、西武ドームは埼玉西武ライオンズ(旧:西武ライオンズ)が本拠地として使用を開始した時からドーム球場だったわけではありませんでした。
西武ドームはもともと、西武球場という屋外球場でした。
この西武球場の歴史は古く、1964年に「西武園球場」としてアマチュア向けに作られた野球場として開場しました。会場当時はプロ野球の2軍戦が極々稀に開催されていたようですが、球場の規模としては、とても小規模なものでした。
その後、プロ野球が開催できる球場として、1978年から改修工事が行われました。
その改修工事が行われている中で、国土計画(現・西武鉄道の前身会社)がクラウンライターライオンズを買収し、西武ライオンズと改称した後、この改修中であった西武園球場を西武ライオンズの本拠地として使用することとしました。
そしてこの本拠地が決まったことから、工事が終了した1979年より「西武ライオンズ球場」として開業しました。
その後20年以上、西武ライオンズの本拠地である屋外球場として使用されていましたが、1999年にドーム球場として改修がされました。屋外球場を、後からドーム球場化するということは前例がなかったことでしたが、西武球場は将来のドーム化を見据えて設計されていたことから、スムーズに工事は進みました。
そして、ドーム化の工事が終わった後、西武球場は「西武ドーム」として生まれ変わることになりました。
なお、ドーム球場というと、完全密閉されている球場がほとんどでありますが、この西武ドームは後から屋根を架設し、傘をかぶるようにして、ドーム化の工事が行われています。
このドーム化の仕組みが、この後ご説明する「西武ドームは暑い」という問題の理由にもなります。
西武ドームが暑い理由
引用:ニコニコ大百科
ではなぜ、西武ドームは暑いと言われているのでしょうか。
立地だけでみると、埼玉の所沢、その山深いところに球場があるため、都心などと比べると、暑さは和らいでいそうではあります。
実は、西武ドームが暑い理由は、この立地条件を簡単に跳ね返してしまうほどの理由が2つあります。
まず1つ目は、先程ご紹介した「ドーム化」を行った建設の仕方にあります。
西武ドームは屋外球場に傘をするように屋根が架設されていますが、ドームは支柱のみで支えられており、球場側面は屋外となっています。
このため、完全密閉ではないことから、他のドーム球場のように空調が効きにくい構造であることや、外気の影響が直撃するのです。
ドーム球場でありながら、環境が屋外であることが、この暑さの原因となっているのです。
そして2つ目は、そもそもの球場の作り方に問題があったとされています。
西武ドームの前身としてご紹介した西武ライオンズ球場ですが、この球場は、山の中を掘るようにして球場が作られています。つまりは外から見ると、すり鉢状に球場が作られているのです。
このことから、球場は「盆地化」し、一度球場内にこもった空気は、球場内に滞留し続け、暑さがどんどん増していく構造となっているのです。
ただでさえ「盆地化」している球場に、蓋をするように「ドーム」が架設されているため。まさに「暑さのスパイラル」のような構造となっていると言えるわけです。
一説によると、球場の中心部にあるピッチャーマウンドは、暑いときだと45度ほどまで上がっていると言われています。
こんな暑い中、投球し続けなければならない投手陣は相当な体力が求められるというわけです。
埼玉西武ライオンズの投手陣がなかなか良い成績になりづらい原因は、もしかするとこの「盆地ドーム」を本拠地としていることが理由なのかもしれませんね。
西武ドームはサウナ?蒸し風呂?
引用:プロ野球
このように「盆地化」したドームは、空気が滞留する構造となっているため、熱い空気が流れ込み、滞留することとなります。
この空気が滞留することは、気温だけではなく、湿度にも大きく影響することになり、ただ暑いだけではなく、蒸し暑さが際立つ球場となってしまっているというわけです。
西武ドームでは、野球以外にも様々なアーティストのコンサートなどが開催されています。普段は野球好きしか訪れない場所であるため、野球に興味がなく、なかなか行き慣れない方に対しては「西武ドームはサウナみたいなもんだから気をつけてね」「西武ドームは蒸し風呂だと思っていった方がいい」などというようなアドバイスが送られているようです。
ちなみに、こうした「サウナ」「蒸し風呂」化していることについて、球場運営側としては「構造上は問題ない」と言い切っているようです。
確かに1999年の西武ドーム開業から20年以上、プロ野球の開催球場として成立してきているため、確かに「プレーができなくなるほどの問題は生じていない」ということなのかもしれませんが、他の球場と比べると、明らかに厳しい環境であることから、何らかの対策が必要な状況であることは事実だと言えそうです。
西武ドームの暑さ対策
引用:みじかめっ!なんJ
ただ、西武ドーム側も、全く暑さ対策を行っていないわけではありません。
まず、この暑さは観戦するファンだけではなく、プレーする選手にとっても「大敵」なのです。
選手たち当事者に対しての暑さ対策としては、ベンチ内に3台の「簡易冷房機」が設置されてるとのことです。これで「いつまでも暑い」ということは避けられているようですが、ベンチにいる人へ向けた配慮となっているため、グランドでプレーする選手にとっては、暑さは変わらないままです。
では、観戦するファンにとってはどうでしょうか。
実は内野スタンドに大型の扇風機が設置されているようで、これで空気の循環は行われるようになっているそうです。しかし、設置されてるのは、あくまで「扇風機」。決して冷風機ではないですから、空気の循環を促すのみとなり、涼しくなる、というよりかは、熱くならないようにする、といった配慮しか出来ていないのが現状のようです。
ちなみに、このスタンドに設置された巨大扇風機は、スタンドからグランドに向けて送風されているとのことで、グランド上ではこの扇風機が起こした風によって、打球に影響が出ているそうです。
西武ドームは空調設備を改修している?
引用:鹿島建設
このように暑さ対策に苦労している西武ドームですが、今後については空調設備の改修を予定しているそうです。
1塁、3塁側のベンチに空調ダクトを新設することで、グランド内に冷気を通すことが実現できる様になっている他、スタンド部分については、屋内施設を新設することで、空調の効いた場所を確保し、暑さから回避できる場所を作るようです。
やはり、球場が完全密閉では無い限り、完璧な空調設備を導入することは不可能であることから、このような対応が限界なのかもしれません。
ちなみに、今回は西武ドームの暑さにフォーカスした記事となりましたが、もちろん外気が筒抜けになっている構造が故、寒さとも隣り合わせの球場になっています。
3月4月のオープン戦やシーズン開幕の時期は所沢もまだまだ冷え込み、吐く息を白くさせながら選手たちはプレーを行っています。
2020年は特殊なシーズンで、日本シリーズ開催も11月末と大きくずれ込んでしまいましたが、もし埼玉西武ライオンズが日本シリーズに進出していた場合、パ・リーグ主催は平日日程でしたから、恐らくナイターゲーム。冬の夜を感じながら、日本シリーズを戦っていた可能性もあったということになります。
埼玉西武ライオンズは、この球場をボールパーク化しようと大規模な改修を予定しているそうですから、観戦環境面、プレー環境面で厳しい状況な分、他の部分で最大限のおもてなしが出来るように、これから期待したいですね。