スポーツには、選手がもっとも輝くフィールドがあります。
中でも野球においては、バッターが立つバッターボックスと、ピッチャーが立つピッチャーマウンドが舞台のように華々しく輝いているのが特徴ではないでしょうか。
野球好きな人も、そうでない人も、何気なく見ている野球の試合。
そんな中で、ピッチャーマウンドについて、細かく意識している人は少ないのではないでしょうか。
実はピッチャーマウンドには、意外にも知られていない厳密なルールや、その作り方にも細かい仕様があるのです。
今回は、そんなピッチャーマウンドについて紹介していきたいと思います。
ピッチャーマウンドとは
引用:ナゴヤドーム
そもそもマウンドとは、日本語で「盛り土」という意味です。
野球をよく見ている人なら、当然分かっていることかもしれませんが、ピッチャーが立つピッチャーマウンドは、小高い丘のようになっています。
ピッチャーマウンドは、ピッチャーが投球する区域を指しており、円形の丘のような形をしています。
バッターからみて真ん中やや後方に「ピッチャーズプレート」と呼ばれる板が設けられており、ピッチャーはその板に軸足を付けて投球を始めることが義務付けられています。
もともと、19世紀ごろまではこのマウンドではなく、長方形の区域だけが設定されていたそうです。
やがてこのエリアに土が盛られるようになってから、現在のマウンドのような形になっていきました。
そしてエリア区域の中で投球する、というルールから、より公平性を増すためにピッチャーズプレートが設置されました。
小高い丘のようになったピッチャーマウンドの傾斜を利用して、ピッチャーは投げるボールに角度とスピードを付けられるようになったのですが、
この傾斜や高さについても細かい規則が設けられています。
高さについては、後述にて詳しくご紹介するため、ここでは傾斜についてご紹介します。
ピッチャーマウンドの傾斜については、1フィートにつき1センチの勾配がつくように定められています。
しかし、この勾配が公平性を保てているか、というところでは、やや厳密ではなく、様々な状況や環境によって左右されます。
まず投手が投げる位置です。
投手はピッチャーズプレートに足を掛けて投球する、というルールがありますが、その位置については定められていません。
したがって、投手がピッチャーズプレートのどの部分に足を掛けるかによって、投球時の角度は大きく変わります。
そもそも、投手によってリリースポイントの位置などは大きく変わるので、ここに厳密なルールを設けるのは不可能ですね。
バスケットボールで言えば、シュートを打つ姿勢にルールが設けられるぐらいの無理難題でしょうか。
加えて、投手は安定したピッチングフォームで投げるために、投球前に軸足となる土を掘ります。
この掘る深さについても投手によってさまざまであるため、投球時の傾斜については、厳密化できない部分でもあります。
そして、実はこのピッチャーマウンドに使われる土については、どのような材質の土を使うかは定められていません。
したがって、柔らかい土、硬い土などによって、この傾斜が微妙に変わってくるので、厳密には一律出来るものではありません。
この中で、唯一統一化できるとしたら、土の質を全球場で統一することぐらいだと思いますが、グランド全体で使用している土とのバランスや、
球場全体の景観、その球場の環境によって、最適な土が異なるため、ここを統一するのもなかなか難しいと思います。
投手によっては、このマウンドの形や材質、傾斜などによって相性があるようで、得意不得意を示す投手もいるので、投手の球場ごとの成績を見てみると、
「マウンドとの相性」が分かり、面白いかもしれません。
この「マウンドとの相性」はプロ野球選手に起きるものではなく、草野球をやる一般人でも起こりうるものなので、それぐらいピッチャーマウンドというのは、繊細で大事なものなのです。
この傾斜については、プロ野球選手などは平気に投げているようにも思えますが、投球する際に踏み込む足にはこの傾斜の中で、全体重が乗っかるため、相当な負担があります。
そのため、投手の足腰を鍛えるというのは、この動作を何回も行う上では非常に重要となるわけです。
ピッチャーマウンドの高さ、寸法は?
引用:iZa
細かいルールについてご紹介してきましたが、続いては高さやその他の寸法について紹介していきます。
まずピッチャーマウンドの形についてですが、直径は18フィート(約5.5m)の円形に土を盛り上げた構造にする必要があります。
加えて、その盛り上げ方、つまり高さについては10インチ(254mm)と定めれています。
この高さに定められたことについても経緯があり、前述した土が盛られるようになってからは、この高さに厳密なルールが設けられていませんでしが、この高さや傾斜を利用して投手有利な状況が作られてしまったため、徐々にその高さについても制限が設けられるようになりました。
まず、1904年に高さを15インチまでとする制限が付けられました。
その後、1950年に高さを15インチに統一することが定められました。
そして、1969年に高さを10インチとして、傾斜についてもルールが定められました。
このようにして、球場による差異をなるべくなくすような措置が取られ、現在のルールが策定されています。
一方で、少年野球など巷にある球場では、このようなルールによって作られているものは少なく、球場によってその高さや傾斜についても様々あるようです。
これは、管理が難しい点や、少年野球と大人用野球の兼用グランドなどの条件によって、定めるのが難しいとされているようです。
ピッチャーマウンドからの距離は?
引用:日本体育施設
ピッチャーマウンドからホームベースまでの距離についても厳しく定められています。
1881年に45フィート(13.7m)として定められましたが、投打のバランスなども考えられるようになり、何度か変更がされています。
45フィート(13.7m)から50フィート(15.2m)に変更の後、現在の60.5フィート(18.44m)に定められています。
現在の60.5フィート(18.44m)に変更されたのが1893年のことで、これ以降130年近く変わっていないことから、今後も変更がされることはないと思われます。
この距離については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
ソフトボールのピッチャーマウンドの作り方は?
引用:メトロポリタンリーグ
野球の「親戚」のような競技として、ソフトボールがあります。
ソフトボールの場合、ピッチャーマウンドはどうやって作られるのでしょうか。
実は、ソフトボールにはマウンドがありません。
厳密に言えば、野球のピッチャーマウンドのような小高い丘が設けられているわけではなく、平坦な円形区域が設けられ、その中にピッチャーズプレートが設置され、野球同様なルールで投手は投球を行います。
野球については、前述したとおり、角度をつけて投げるために小高い丘のようなピッチャーマウンドが設けられましたが、ソフトボールはピッチャーが下手投げで投げます。
そのため投球に角度が求められる競技ではないため、ピッチャーマウンドのような丘ではないとされています。
サイズとしては、ピッチャーズプレートを基準として半径2.44mの円であることが定められています。
また、ホームベースまでの距離は男女で異なり、46フィート(14.02m)女子が43フィート(13.11m)と定められています。
野球に比べると、ソフトボールは小高い丘を作る必要がなく、円を描くだけで済むため、非常に簡素であると言えます。
そのためなのか、中学校や高校で行う体育の授業でよく行うのが、野球ではなくソフトボールである理由の一つとも言えます。
少年野球のピッチャーマウンドの作り方は?
では、少年野球のピッチャーマウンドの作り方はどうなのでしょうか。
少年野球も「野球」ですから、プロ同様に傾斜のある丘を用意し、ピッチャーマウンドは作られます。
しかし、少年野球では、選手がまだそこまで足腰が鍛えられているわけではないため、この傾斜が緩やかであるケースが多いです。
前述の通り、このピッチャーマウンドから投げるというのは、足腰に相当な負担がかかるため、野球少年の保護のため、傾斜があまり付けられていないのがほとんどです。
そして、ピッチャーマウンドからの距離ですが、基本的には小学6年生で16mとされている地域がほとんどのようですが、実は所属する連盟などによってその距離が変わるケースがあります。
地域によっては、学年ごとにこの距離が変わり、小学5年生で15m、小学4年生以下では14mとなっている地域もあります。
また、少年硬式野球(通称:リトルリーグ)では、14.03mと定められており、使うボールによっても距離が変わるそうです。
また少年野球場、つまり専用グランドでは、ピッチャーマウンドが作られているケースが多いですが、小学校の校庭などでは、このピッチャーマウンドの傾斜があると、他の競技の妨げになるケースも考えられるため、傾斜がほとんどないケースの方が多いようです。
野球少年がマウンドのせいにする、ということはあまり聞きませんが、稚ながらにマウンドに不満をいだいている野球少年は案外いるのかもしれませんね。
ちなみに、プロ野球のジュニアリーグでは、プロと同じ球場を使用するケースがありますが、その場合は移動式のマウンドを使用しているケースもあります。
普段何気なく見ている野球。その中にあるピッチャーマウンドにも厳密かつ意外なルールが隠されています。
野球をご覧の際には、このピッチャーマウンドに注目して見てみるのも面白いかもしれませんね。