日本のプロ野球とメジャーリーグ。
その違いはプレースタイルはもちろん、球場や国民の熱狂ぶりも違いはあります。
そんな違いの中でも、大きく違いがあるのが、ファンの応援スタイルでしょう。
メジャーリーグは球場全体を巻き込むような応援スタイルは存在せず、球場に響くのは、キレイな打球音とファンの歓声が主です。
一方で日本のプロ野球には、どの球団にも「応援団」が存在し、チームの攻撃時には、応援団が鳴り物を鳴らし、ファンがそれに合わせて声援を送るスタイルとなっています。
日本人特有の団結力、一体感がもたらす応援のパワーは絶大なもので、時には球場の雰囲気をガラッと変え、試合の流れすら変えてしまうほどの威力をもっています。
そんな日本プロ野球に欠かせない応援スタイルを支えているのが、各球団の「応援団」です。
選手を鼓舞し、ファンが楽しめるように毎年工夫を重ねながら応援スタイルを築き上げている応援団ですが、
今回はそんな日本プロ野球の応援団がどのように成り立っているのかについてご紹介したいと思います。
プロ野球応援団の仕組みとは?
引用元:近畿広島県人会
日本プロ野球には12球団全てに応援団が存在しています。
その歴史は古く、鳴り物での応援スタイルは1975年に広島の山本浩二選手に向けて、トランペットを用いて応援したのが始まりとされています。
そして1985年頃には、ほとんどの球団で鳴り物を使った応援が主流となり、この頃から応援を主導する「応援団」が存在しはじめたのではないか、とされています。
プロ野球の応援団は、そのほとんどが「私設応援団」によって成り立っています。
「私設応援団」とは、球団や球場から認可を受けた応援団で、基本的には無給でボランティアのような形で人員が構成されています。
球場や球団から認可を受けていれば、応援団員としてチケット代は無償、または割引価格で購入でき、決められた応援スペースへの入場が認められているそうです。
また「私設応援団」は各球団に1つではありません。
プロ野球は全国で開催され、北は北海道、南は福岡、ときには沖縄で開催されることもあります。
各地に各球団の「私設応援団」が存在し、12球団で150近くの私設応援団が存在しているとも言われています。
どの球場でも応援団が存在し、いわゆるプロ野球の応援が行われているのも、各地にいる各球団の応援団が存在しているからなのです。
プロ野球の応援団の仕事は?給料は支払われる?
引用元:デイリーニュースオンライン
プロ野球は、ほぼ毎日行われています。そうそう時間の取れる人が全てではないのが実情です。
試しに平日のプレーボール直後の応援を聞いてみてください。
心なしか、トランペットの音量が小さく感じることがあると思います。
それは、応援団員が試合開始に間に合わず、トランペット奏者の方が足りなくなっていることが原因として挙げられます。
前述の通り、プロ野球の「私設応援団」は無給。つまり私設応援団に所属している限りでは、給料は発生しないことになります。
平日の夕方から応援団として活動するのは、普通のサラリーマンではなかなか出来ないことです。
「私設応援団」を支えているのは、日中や深夜に仕事をしているフリーターや学生、平日休みや時間の融通がきく自営業を生業としている方が多いようです。
中には、球団公式応援団という人もいるようで、その方は「球団職員」という形で、球団から雇用されて応援団を率いているケースもあります。
つまり、このような場合は、球団から給料を貰って、応援団に所属している形になります。
「私設応援団」に所属している方の中では、応援を優先して、応援団としての活動に支障がでない仕事を選んで生計を立てている人も多く存在しているようです。
プロ野球の応援団は、もはや各球団の顔の一部として、球団側に存在していると認識している方も多いかと思いますが、我々一ファンと同じ立場や結成された集団なのです。
実はこの「私設応援団」には案外簡単に入団できるものなのです。
立ち上げ直後の「私設応援団」であれば、球場で団員の募集を呼びかけているケースもあります。
ですので、応援団として自身が応援しているチームを盛り上げたいという方がいれば、試合開始前、もしくは試合終了後に「応援団」の方にお声掛けしてみてください。
プロ野球の応援団で使用する楽器は?
日本プロ野球の応援団で使用している楽器のほとんどは「太鼓(スネアドラム)」と「トランペット」で演奏されています。
また楽器ではありませんが、一緒に応援するファンを統率するために「笛」が用いられています。
12球団のすべてにこの「太鼓(スネアドラム)」と「トランペット」が使用されていますが、プロ野球応援団の歴史の中では、それ以外の楽器が使われてきています。
一例を挙げると、2007年~2009年にかけて、千葉ロッテマリーンズの応援団(正式には応援団ではなく、応援パフォーマンス集団)では、サッカーでよく使われる「ブブゼラ」が多用された時期もありました。
また、現在でも、2018年から東北楽天ゴールデンイーグルスの私設応援団では、本拠地の楽天生命パーク以外では「太鼓(スネアドラム)」と「トランペット」に加えて「トロンボーン」も使用して応援がされています。
そして東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地では、長らく鳴り物を使用した応援が禁止されていますが、2018年シーズンからスピーカーから流れる楽曲演奏に合わせて応援がされるようになりました。
このスピーカーを使った演奏は韓国や台湾プロ野球でよく見られる光景であり、いわば「輸入された」応援スタイルであるとも言えます。
この応援スタイルは、東北楽天ゴールデンイーグルスのファンからも、またそれ以外のプロ野球ファンからも賛否両論の声が挙がり、物議を醸しました。
プロ野球の応援団で使用する旗は?
引用元:野球の記録で話したい
プロ野球の応援で欠かせないものといえば、前述の楽器に加え、応援旗も挙げられます。
応援団が振る旗は、球団を代表する旗から、選手固有を応援する旗まで様々あります。
応援団が使用する「大旗」と呼ばれるものについては、インプレー中であれば、応援パフォーマンスエリアで掲出することが許可されていることがほとんどです。
しかし、この「大旗」がプレーグランド内に架かるような掲出されることは許可されておらず、オリックスバファローズの本拠地である京セラドーム大阪では、スタンドからグランドまでの距離が短く、時たま審判より「大旗」がグランドに架かっていると指摘を受けるシーンが見られることもあります。
旗については「小旗」と呼ばれるものもあり、この旗は応援団に限らず、ほとんどの席種でファンのみんなが掲出することができる旗も存在しています。
この「小旗」を多く使用使用しているのが、埼玉西武ライオンズ。
ファンのほとんどがこの「小旗」を使用して応援をしており、旗を使った応援パフォーマンスも数多く存在しています。
かつては、千葉ロッテマリーンズも「フラッグテーマ」や「勝利の旗」という応援歌に乗せて旗を振っていたこともありましたが、応援団の変更や、応援方針の変更によって「小旗」を振って応援している人は少なくなっています。
プロ野球の応援団による事件について
実はプロ野球の応援団、私設応援団では数々の事件が発生しています。
ここでは近年に起きた事件について、紹介していきます。
まず2002年には東京ドームの職員や阪神甲子園球場の職員に対しての恫喝・脅迫行為があったとして、そのメンバーが所属していた阪神タイガースの私設応援団の出入り禁止が通達されたことがありました。
この事件は暴力団の存在も大きく関与していたとして、これ以降、暴力団排除条例に従って、プロ野球の応援団からも、暴力団に所属しているメンバーの存在について厳しく取り締まることとなりました。
この取締強化を受けて、2008年に一部の中日ドラゴンズの私設応援団の活動が許可されず、活動停止となりました。
そして、2014年には中日ドラゴンズのすべての私設応援団の活動が認められなくなりました。
いずれも暴力が関与していたということから活動が認められなくなった事例でありますが、この問題に関しては、最高裁での裁判となりましたが、結果は日本プロ野球機構(NPB)の勝訴となりました。
この他にも、千葉ロッテマリーンズの応援パフォーマンス集団「MVP」が、ボビー・バレンタイン監督(当時)の辞任を受け、この処遇に不満を球団側に訴える内容が「フーリガン化」したことから、千葉ロッテマリーンズ球団側と決裂し、
当時使用していた応援楽曲の使用停止と、応援旗・横断幕などの焼却などを引き起こし、ファンに混乱を招いたこともありました。
千葉ロッテマリーンズの問題は、球団と応援団による軋轢から生まれたものでしたが、
その他の事件は、暴力団排除条例に基づくものとなっており、昨今芸能界でも話題となっている「反社会的勢力」の排除を行い、クリーンな環境にすることを目指し起きた事件と言えます。
プロ野球の応援団は発足してから、球団への攻撃的な訴えを行うことで衝突することも多々ありました。
現代は、クリーンな社会や環境であることを求められている時代でありますので、応援する側も、応援とりまとめる側も、球団を代表する「顔」として、見本となる姿であることを期待したいですね。