打者のタイミングを外す武器として多くのプロ野球選手、メジャーリーガーが使用する「チェンジアップ」
ストレートと同じ腕の振りで放たれる球種として効力を発揮するチェンジアップですが、一体どのような球種なのか。そこで今回はあえて「チェンジアップ」のみにフォーカスしてご紹介していきたいと思います。
チェンジアップとはどんな球か
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/チェンジアップ
そもそもチェンジアップとはどのような球なのでしょうか。
簡潔に表現すると「直球と同じ腕の振りから投じられる球速の遅いボール全般」がシンプルかもしれません。
チェンジアップはストレートよりもスピードが遅く、バッターの手前でゆっくりと沈んでいき、バッターのタイミングを外すのに有効な変化球で、三振を取る事も出来る変化球です。
近年はストレートと同じ球速でチェンジアップを投げる投手も多くいますが、基本的な原理は上記の通りです。
また、通常変化球の多くの握り方は1つなのですが(違う場合もありますが。)、チェンジアップの握り方は複数あり、その握り方は十人十色です。
チェンジアップの軌道
出典:http://haruceo.hatenablog.com/entry/2018/04/24/121927
チェンジアップの軌道はストレートに近く通常のストレートより遅いスピードで打者の手前で少し変化(沈む)します。ストレートの軌道でも、回転をあまりかけないため、ボールは減速しながら沈んでいきます。
このボールは、ストレートを待つときは速いスピードボールを想定しているため、同じストレートの軌道でも思っている以上にボールが来ないため、タイミングを外すのに最適な球種となっています。
チェンジアップの意味
出典:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/fullcount/sports/fullcount-305457
そもそも「チェンジアップ」の意味は何なのでしょうか?
チェンジアップは日本とアメリカで少し捉え方が異なります。
日本ではチェンジオブペースとチェンジアップは、どちらも「タイミングを外す遅いボール」を指す言葉でしたが、2000年代に入りチェンジアップは「変化球」として分けて認識するようになりました。
一方アメリカでは、球速に緩急をつけることを「チェンジ・オブ・ペース」と呼んでいたそうですが、直球と同じ腕の振りから投じられる球速の遅いボールのことを全体的にチェンジアップと言うようになったそうです。
日米で言い回しや捉え方が違うのは仕方ありませんね。
そういった意味では、日本の野球用語のほとんどは和製英語なのです。
日本の野球で当たり前に使われている野球用語は、アメリカ野球では通用しないそうです。そのいくつかをご紹介します。
【キャッチボール→Play Catch】
キャッチボールという用語は、野球経験者だけでなく、一般の方も使うことがあります。海外ではキャッチボールとは言わず、Play catchと言い、「キャッチボールしよう」を英語で言うと、「Let’s play catch」という言い方になります。
【ホームベース→Plate】
バッターボックスの真ん中にある五角形の白い板をホームベースと表現し、ホームベースは海外ではPlateと言われます。
【ノック→Fungo】
試合開始前に両チームが行う守備練習を日本では「ノック」と言い、シートノック、アメリカンノックなど、多種多様なノックがあります。
しかし海外ではノックという表現ではなく、「Fungo」という言い方をします。
【ゲームセット→That’s the ballgame】
試合が終了したことをゲームセットと言いますが、海外では「That’s the ballgame」と言います。
「ゲームセット」は海外ではゲームの用具一式を指すので、ゲームセットという表現はしないようですね。
【クリーンアップ→Heart of the order】
日本では1番から9番まである打順の中で、3番、4番、5番打者のことを「クリーンアップ」と表現します。
しかし海外でクリーンアップと言うと、「4番打者1人だけ」を指すので、日本とは全く意味が異なるそうです。
【セーフティバント→Drag bunt】
セーフティーバントも海外では通じないようで、海外では「drag bunt」と言います。
「drag」には引きずるという意味があるので、そこにbuntを付けて「Drag bunt」と言うようです。
チェンジアップの意味合いもそうですが、日本野球には多くの和製英語はあるということでしょうね。
チェンジアップの使い手 すごい投手は?
日米でチェンジアップの使い手は多くいますが、その中でもどの投手が優れているのでしょうか?
筆者の独断で数名ピックアップしていきたいと思います。
【杉内俊哉】
出典:https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2015/12/23/90_1/
杉内俊哉氏は、福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツで活躍した選手です。
ゆったりした投球フォームで、ストレート、スライダー、チェンジアップなどの変化球を投げ分け、最大の特徴は、ストレートと様々な変化球を「全く同じフォーム」で投げるという点です。
その中でも、杉内俊哉氏のチェンジアップは空振りを取れるチェンジアップとして有名です。チェンジアップは、150km/hに満たないストレートをより速く見せるだけではなく、緩急が20km/h以上あり、さらに縦への大きな変化を見せます。
歴代の左投手でもトップクラスの技術を持ち、チェンジアップのレベルも歴代ナンバー1といっても過言ではないかもしれませんね。
【岡島秀樹】
出典:https://baseballking.jp/ns/80232
読売ジャイアンツ、メジャーリーグのボストン・レッドソックスの抑えやセットアッパーで活躍した岡島秀樹氏。
この岡島氏はメジャー時代、日本人で初めて高速チェンジアップを投げた選手として知られています。
日本時代は大きく縦に曲がるカーブを武器にしていましたが、メジャーではボールの影響で思うようなカーブを投げれず、苦戦を強いられていました。そこで新たな武器として覚えたのが、チェンジアップです。
当時のチームメイトで、サイ・ヤング賞にも輝いた経験のあるヨハン・サンタナ選手からチェンジアップを教わり、このチェンジアップが結果的に岡島氏の最強の武器となりました。
岡島氏の独特の投球フォーム(投げた後顔が下に向く)に加え、シンカー気味に変化する高速チェンジアップはメジャーの打者を多く斬っていきました。
【前田健太】
出典:https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/mlb/2017/08/10/___split_8/
広島東洋カープ、現在はロサンゼルスドジャースで活躍している前田健太選手。
広島東洋カープ時代は伸びのあるストレートとスライダーを武器に活躍していましたが、メジャー移籍後は元々の持ち球でもあったチェンジアップを改良。その結果、チェンジアップでの奪三振率が大幅にアップし、スライダーに変わる武器にまで成長しました。
他にもダルビッシュ有選手、東北楽天ゴールデンイーグルスの松井裕樹選手、北海道日本ハムファイターズの金子千尋選手など、多くのチェンジアップの使い手がいますので、皆さんも是非球場に足を運んで生のチェンジアップを体感してみてくださいね!